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飲食店開業の流れと手続き

「憧れだった飲食店を持ってみたい!」
「退職後は、自分のカフェを開きたいなぁ」

このように、自分のお店を持つことに憧れる方も多いのではないでしょうか?

しかし、どんな手続きがあって、どれくらいのお金がかかるのか気になりますよね。

そんな皆さんのために、今回は飲食店開業の流れと手続きについて大まかに解説していきます。
この記事を読んで、全体像の把握にぜひ役立ててくださいね。

飲食店業界について

飲食店は多数存在しており、入れ替わりの激しい業界です。地元の飲食店が頻繁に入れ替わる姿を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

2022年の中小企業庁の調査によると、実際に、飲食店は開業・閉業が共に最も多い業種であることが明らかとなっています。

引用: 中小企業庁「2022年版 小規模企業白書(HTML版)第2節 中小企業・小規模事業者の現状 第1-1-37図「業種別の開廃業率」

そのため、事前に入念な準備やリサーチをする必要があるといえます。

準備期間はどれくらいかかるの?

飲食店を開業するためには、少なくとも半年~1年程度の準備期間が必要とされています。

店舗のコンセプトや事業計画の立案から始まり、資金調達、物件探しや各種手続きなど、どれも入念な準備が欠かせません。

そのため、準備期間は余裕をもって1年ほど設けるのがオススメです。

開業にかかる費用・予算

どんな費用がかかる?

概ね、以下のような費用がかかると言われています。

  • 店舗を取得する費用
  • 店舗の内外装費用
  • 重機や備品などの費用
  • その他開業のための費用
  • 当初の運転資金 など

費用はどのくらいかかる?

日本政策金融公庫の調査によると、飲食店の開業にかかる初期費用は、平均で1077万と言われています。

4 開業費用と資金調達
~「250万円未満」で開業する割合は増加傾向~
○ 開業費用の分布をみると、「250万円未満」(21.7%)と「250万~500万円未満」(21.4%)で4割以上を占める(図-13)。
  「250万円未満」で開業する割合は増加傾向にある。
○ 開業費用の平均値は1,077万円、中央値は550万円であった。

日本政策金融公庫 総合研究所 「2022年度新規開業実態調査」~アンケート結果の概要~

そんなにかかるの?と驚いた方も多いのではないでしょうか。
ただし、よく見ると250万未満と250~500万円未満で4割以上を占めています。
そのため、コンセプトや立地など、業種やアイデアによっては500万円以内で開業することも可能なのです。

しかし、全て自分で用意するのは難しい場合が多いですよね。
その際、金融機関から融資を受けることができます。

コンセプト設計

飲食店を開業する際に、コンセプト設計は非常に重要な項目となります。

コンセプト設計を考えるうえで、これらの点を明確にすることが必要不可欠です。

  • ターゲット層
  • 利用動機
  • 業態
  • 業種 など

「誰のどんな利用動機に対して、何をどうやって、いくらで提供するか」を明確にするようにしましょう。

まずはターゲット層や利用動機を考えるのが大事

あれもこれも、と幅を広げると、ターゲットとなるお客さんにお店の魅力が伝わらず、来店しづらくなってしまいます。コンセプトを明確にすることで、他店との差別化を図ることができます。

業種だけでなく、業態も明確にする必要がある

新しく飲食店を開業する場合、「カフェをしたい」「ラーメン屋を開きたい」など、業種についてはイメージが浮かんでいることが多いかと思います。
その際、業種だけでなくお店のコンセプトをしっかりと決めておくことが大事です。

仮に、カフェを始めるにしても、「安くて気軽に入れる庶民的なお店」もあれば、「素材に拘った高級志向のお店」など、様々ですよね。
コンセプトが明確になると、物件探しやメニューの考案など、実際に開業準備を進める上で取捨選択がしやすくなります。

是非時間をかけてじっくりと考えてみてくださいね。

商標登録

飲食店を開業するとなると、店名やロゴなどが必要になりますよね。
そんな時に関わってくるのが商標登録についてです。

商標とは
事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
私たちは、商品を購入したりサービスを利用したりするとき、企業のマークや商品・サービスのネーミングである「商標」を一つの目印として選んでいます。そして、事業者が営業努力によって商品やサービスに対する消費者の信用を積み重ねることにより、商標に「信頼がおける」「安心して買える」といったブランドイメージがついていきます。商標は、「もの言わぬセールスマン」と表現されることもあり、商品やサービスの顔として重要な役割を担っています。
このような、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です。
商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものなどのタイプがあります。

商標権を取得するためは、特許庁へ商標を出願して商標登録を受けることが必要です。商標登録を受けないまま商標を使用している場合、先に他社が同じような商標の登録を受けていれば、その他社の商標権の侵害にあたる可能性があります。また、商標を先に使用していたとしても、その商標が、自社の商品やサービスを表すものとして需要者に広く知られているといった事情がなければ、商標権の侵害にあたる可能性がありますので注意が必要です。
引用:特許庁 商標制度の概要

上記の説明にあるように、商標とは、自分のサービスと他人のサービスを区別するためのマーク。
つまり、商標登録すると、自分で考えた店名やロゴ、会社名などが自分専用として使用できるようになるのです。

そのため、他者が商標登録している名称などを使用すると、商標侵害として損害賠償を請求されてしまうことも・・・!
商標侵害と判断された場合、その名称などが使えなくなり、お店の運営ができなくなる可能性もあります。


そのようなトラブルや最悪の事態を引き起こさないよう、必ず事前に商標検索を行うようにしましょう。
自分の使用したい店名やロゴなどが商標登録、あるいは出願されているか、インターネットで簡単に調べることができます。

以下のサイトで検索することで、競合のリサーチにも役立てることができますので、ぜひご活用ください。

特許情報プラットフォーム

事業計画書の作成

開業前には、事業計画書もしっかりと練るようにしましょう。

事業計画書は、飲食店開業の計画を整理するために行うものですが、
金融機関の融資を受ける際に提出が必要です。そのため、念入りな作成が必要となるでしょう。

用途によって記載内容は少し変動しますが、どんな用途においても、必ず、現実的で実現可能な内容を書くようにしてください。

非現実的なものでは、事業の継続や融資を受けること自体も難しくなってしまいます。

例えば、日本政策金融公庫からの融資を検討している場合には、HPで発行されている創業計画書を基に計画を練っていくとよいでしょう。

他の金融機関であっても、概ね計画に求められる内容は似ていることが多いため、まずはこちらを利用してみるのがオススメです。

参考:日本政策金融公庫 創業計画書

他にも、詳しい記入例や月別収支計画書、資金繰り表など、多数役立つものが公開されています。ぜひ、飲食店開業に役立ててくださいね。

参考:日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード

物件探し

コンセプトや事業計画書が作成出来たら、物件探しを行いましょう。

ターゲットに沿った立地や物件を選ぶことが重要です。

物件や立地の選び方については、過去のお役立ち情報で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

【開店・開業】物件選びのポイントを解説!

失敗しない!最適な立地を選ぶコツを解説

メニュー作り

どんな商品を提供するのか、コンセプトやターゲット層などに沿って検討しましょう。

メニューによって必要な設備が異なるため、早めに方向性を決めるのがオススメです。
飲食店は入れ替わりの激しい業界だからこそ、オリジナリティがあると尚良いでしょう。世の中のトレンドやターゲット層を分析し、メニュー開発に取り組んでみてくださいね。
なお、品数が多すぎると効率が悪くなったり、廃棄が増えてしまう恐れもありますので注意してください。

店舗内外装について

開業するにあたって、費用の多くを占めるのが「内外装工事費」。

日本政策金融公庫の資料によると、これらが40%を占めると言われています。
費用は、どのような物件を選ぶかで大きく変わります。

スケルトン物件と居抜き物件がありますが、一般的には前テナントの造作がそのまま残っている居抜き物件の方が安く抑えられるでしょう。
施工業者は店舗の内外装施工実績のある業者がオススメです。

工期に余裕を持たせるためにも、少なくとも開業する3か月前には設計を始めておくのがよいでしょう。

資金調達について

開業時の資金調達額は平均1274万円ですが、いきなり準備するのは難しいですよね。そのため、融資を受けて資金調達している人も多く居ます。

~金融機関等からの借入と自己資金が資金調達額の大半を占める~
○ 開業時の資金調達額は平均1,274万円であった(図-14)。
○ 資金調達先は、「金融機関等からの借入」が平均882万円(平均調達額に占める割合は69.2%)、「自己資金」が平均271万円
 (同21.3%)で、両者で全体の90.5%を占める。

日本政策金融公庫 総合研究所 「2022年度新規開業実態調査」~アンケート結果の概要~

実際に、日本政策金融公庫の調査にて、「金融機関等からの借入」が平均882万円、「自己資金」が平均271万円であることが明らかになっています。
このように、自己資金が少なくても、融資を利用することで資金調達は可能です。

ただし、自己資金0円で融資を受けることは難しいです。それは、融資申し込み要件の多くに、「融資限度額は自己資金の範囲内」や「創業資金の3分の1以上の自己資金を確認できる人」などの記載が多いためです。

そのため、飲食店の開業をする場合は少なくとも開業資金の3分の1以上の自己資金をためるようにしておきましょう。

設備や備品の購入

厨房で使用する調理器具や電化製品を始め、客席で使用する机や椅子など、さまざまな備品や設備が必要となります。
居抜き物件の場合、受け継ぐ設備もあるでしょう。
問題なく使用できるか必ず確認し、必要な物品をリストアップして購入しましょう。

なお、これらの備品類は購入する以外に、リースという手もあります。
制約もありますが、全ての設備を購入すると200万円ほどかかる場合でも、リースであれば月に2万円程度から利用できることも!
最新機種を導入することができ、処分の必要がないのもメリットと言えます。

一方で、毎月支払うリース料金には手数料が含まれているため、長期的に見ると購入よりも高くなってしまったり、契約途中での解約ができなかったり、長期間リース料金を支払っても自分の資産にならない・・などのデメリットもあります。

メリット・デメリットをよく理解した上で、揃えるようにしてくださいね。

必要な資格と各種届出

必要な資格

飲食店を開業するためには、「食品衛生責任者」を必ず1名以上配置しなくてはなりません
さらに、収容人数が30人以上の場合、「防火管理者」の選任も必須です。
調理師免許取得者は必須ではありませんが、居ると尚良しでしょう。
必要な資格については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

飲食店開業に必要な資格とは?わかりやすく解説!

必要な届け出

以下の届け出が必要となります。ぜひ参考にしてください。

  • 開業届

まずは開業届の提出が必要です。個人事業での飲食店開業の場合、提出が義務となっています。
店舗所在地の管轄税務署へ、開業1ヶ月以内に提出するようにしてください。

  • 飲食店営業許可申請

事前に営業許可申請を提出し、営業許可を受けなくてはなりません。
店舗所在地の管轄保健所に申請を提出し、検査に合格すれば2~3週間程度で営業許可を受けることができます。

  • 防火責任者選任届

防火責任者選任届の提出も飲食店開業にあたって必須となります。
店舗所在地の管轄消防署へ、乙種防火管理者、または甲種防火管理者の届け出が必要です。

他にも、火を使用する設備等の設置届など消防関係での届け出が存在します。店舗によって必要な届け出が異なりますので、わからない場合は消防署で相談してみてください。

スタッフ採用

開業1ヶ月ほど前には、スタッフ採用を進めていくようにしましょう。
マニュアルなどを作成し、効率的なオペレーションとなるよう、この期間に教育も行っていく必要があります。

宣伝

開店前に欠かせないのが宣伝です。
グルメサイトに情報を掲載するのはもちろん、SNSもぜひ活用していきたいところ。最近はインフルエンサーに宣伝してもらうパターンも多くあります。
競合がどのような方法で宣伝しているのかもぜひ研究してみてください。
チラシ配りやポスティングなど、近隣住民への周知もしていきましょう。

プレオープン

開店前に、最終段階としてプレオープンを行います。

知人や近隣住民を招待し、実際にサービスを体験していただき、その感想を基に最終調整とブラッシュアップを図ることができます。
これまで準備してきたオペレーションが問題ないか確認できる絶好の機会です。
実際にお客様にサービスを提供することで、これまで見えてこなかった課題が見つかるはず。振り返りを必ず行い、改善に役立ててくださいね。

まとめ

今回は飲食店開業の流れと手続きについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
意外と考えることが多く、初期費用もかかるため大変そうなイメージを持った方も多いかもしれません。

ですが、自分の軸をしっかりと持ち、じっくりと準備することで、開業することは可能です。


競合が多く、入れ替わりも激しい飲食業界。
準備期間にゆとりをもって、開業に臨んでいただけたらと思います。

苦労も多いですが、自分のお店を持てたときの喜びはひとしおでしょう。

今回の記事が参考になると幸いです。

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